焚き火をする機会がめっきり減りました。そのため、キャンプで初めて焚き火をするという人もいます。
ぜひいこいの森で、火をみる火を囲む体験をしてみて下さい。
焚き火の原理と具体的な方法について見ていきましょう。
その前にお願い
これは、五頭山麓いこいの森としてのお願いです。
- 森の中のカマドを移動させたり、解体しないでください。次に利用する人が「かまどがないけど、どこにあるんだろう」と困ることが起きます。
特に風のある日は要注意。いこいの森は、山火事の危険があります。
・焚火の回りに、燃え移りそうな落ち葉や枯れ草はありませんか?
・乾燥している時は焚火の回り水をまくなどしましょう!
・ 各炊事場に消火用の水入れを置いています。
さあ、五頭山麓いこいの森で、実際にチャレンジしてみましょう!
原理は中学校の理科
焚き火に火をつける原理は、中学校の理科で習います。
では問題です。
物が燃えるために必要な3つのものをあげてください。
正解は、
- 燃えるもの(燃料)
- 酸素(空気)
- 温度
です。
なのでコツは簡単3つだけ
では、1つずつ見ていきます。
燃えるものを準備する
燃料となるのは、薪です。中には、ホームセンターから炭を買って持ってきたという人もいるでしょう。
これを燃焼させます。
薪を拾い集める時は、長さはまちまちでよいので、細いものから太いものまで、いろいろなサイズのものを集めてください。メインの薪は、腕の太さぐらいがちょうど良いでしょう。
なお、生木は絶対にやめましょう。水分を多く含むため、燃えにくいですし、火にくべても煙たいだけです。もちろん、木の枝を折るのは厳禁です。
炭は、かなりすごいことをしないと着火できません。薪で火をおこしたところに入れるか、ガスバーナーのようなものでないと着火しません。炭火を継続させるにもコツがあるのですが、ここでは割愛します。
空気はたくさんあるはずだけど
物が燃える(燃焼)とは、燃料を急激に酸化させること。燃料と酸素の化学反応です。空気はそこら辺にたくさんありますが、空気が燃料と接触できるのは、燃料となる薪の表面だけです。効率よく空気を送り込むことが必要となります。
温度を上げ続けると燃え出す
燃料と酸素がそのまま置いてあっても、燃え出すことはありません。燃料が燃えるためには、発火する温度まで温度をあげなくてはいけません。そのためには、きっかけづくりが必要です。そのきっかけとなるのが、最初の着火です。これは、マッチやライターの役目です。
時折、大きな薪をマッチで火をつけようとする方がいますが、それでは燃えません。なぜなら、マッチはあくまできっかけづくりだからです。
マッチの火は、燃料を少しだけ燃やします。そのときに出る熱(燃焼熱)が周囲の燃料の温度を上げ、さらに燃料が燃えます。この連鎖反応が起きた時に燃料は燃え続けます。
そこで、最初に着火するものは、小さな物でなくてはいけません。
これで、なぜ新聞紙が簡単に燃えるか理解できたでしょう。薄く、小さいから、新聞紙はよく燃えます。しかも、燃えるために必要な酸素ともたくさんの面積で接しています。
着火できたら、それをもうひとまわり大きな燃料に火をつけて、さらにそれに火がついたら、もうひとまわり大きな燃料に火をつけてという具合に連鎖させていきます。熱は、上に行きますから、少しずつ大きな薪を上に積んでいくようにします。
なお、生木というのは水分をたくさん含みます。水は温度が上がるときと水蒸気になる時に、たくさんの熱を奪っていきます。そのため、燃料の温度を上げさせないようにします。煙もたくさん出ますので、大変不快な思いをします。
お子さんにそのようなことをさせるときは、まず大人が手本を示し、その後、注意点を説明して、やらせてあげてください。きちんとできたら、褒めてあげてください。そうすれば、その後、危険なやり方をすることはなくなります。
マッチの使い方
いこいの森では、マッチをお貸ししています。
ライターやチャッカマンではありません。マッチです。
最近、マッチで着火することが減ったせいか、マッチで火をつけられないケースも増えてきました。そこで、マッチの使い方について、ちょっと触れておきましょう。
マッチは、細い木の軸の頭に発火性のある混合物がついています。
親指、人差し指で軸の終端をしっかり挟み、中指で頭を押さえて、マッチ箱の側薬に押し当てながら勢いよくこすります。頭薬が発火するので、火がつく頃には中指は外すようにします。
頭薬に火がついたら、頭を下にして、火を軸に移します。そして、火をつけるものに着火するようにしてください。また、風で消えてしまうようなときは、風上を手などで覆ってあげてください。
3つ組み合わせて実際に焚き火に火をつける
火をつける原理は理解できたでしょうか。
マッチの火を使って、小さなものに火をつけて、その火が中くらいのものに火をつけて、最終的に大きなものに火をつけて料理に利用します。その過程で、空気を上手に送り込みます。
では、具体的にやってみましょう。
たとえ、直火が許可されている場所であっても、周囲に枯れ草があれば火事になりますし、木々の周囲で焚き火をすれば枯れてしまいますから、マナー違反です。キャンパーとして、絶対にやってはいけません。
かといって、バーベキュー用の足のついたコンロがない場合は、いくつかの石を置いて、その上に、バーベキュー用の鉄板を置き、そこで火をおこすといった方法もあります。
薪をサイズ別に分けて、ナタなどを使って枝分かれがない状態にしましょう。
一番下から着火剤となる杉の葉っぱ、細い薪、中くらいの薪、大きな薪と重ねます。下から順にというのは、火は上へと行くからです。もちろん、隙間なく積み重ねると、酸素が入っていきません。かといって隙間がありすぎても温度が上がらず燃えません。焚き火の時の木の積み方にはいくつか方法はありますが、一番簡単なのは、長い薪の遠い側の先端を重ね、手前側は左右に振り分けながら、逆Vの字に置いていく方法です。
こうすると、空気が通るある程度の隙間が勝手にできています。もちろん、長さが長いものは、手前の方に出しておきます。
あとは、マッチで着火するだけです。
最初は、炎がちょっとの風で消えてしまうこともあります。手で囲ってあげるなりして、風を防いであげましょう。もちろん、ウチワであおいではいけません。
小さな炎が少し安定したら、必要に応じてウチワで空気を送ります。たいがいは、風が吹いてるので、その自然の風で燃えていくはずです。
このように火が回り始めれば、もう大丈夫です。
なお、炭の場合は、薪よりも火がつきにくいので、薪を重ねた上に炭を載せて、火を移すようにします。
炎の温度は色でわかりましたよね
さて、中学校の理科では、炎の温度と色の関係について習っているはずです。
たとえば、空気を送り込んでいないガスバーナーの炎は赤いのですが、適切に空気を送り込むと青くなります。
焚き火の色は赤く、ガスコンロの炎は青いですね。つまり、温度が違うのです。焚き火の炎は、スス(炭素の粒)が光っているため、赤く見えます。したがって、焚き火の炎を直に使うと、鍋や食材にススがついて黒くなります。
その点、炭の場合は、それほど炎を上げません。つまり、ススが出ていないからです。
焚き火で料理をするときは、自宅のコンロよりも温度が低く、ススが出ているということを頭に入れて、料理方法を考えなくてはいけません。
目を離してもあわてない
しばらく目を離したら、火が弱くなっています。
これは、燃え尽きていくことで薪どうしが離れてしまい、互いに温度を上げることができなくなるためです。
逆Vの字で置いてくと、このように勝手に火が消えてくれます。
再び火を大きくしたい場合ですが、長いままの薪は燃えていない部分が手前にあるので、そのまま押し込んで、薪どうしを重ねてあげます。そうすれば、勝手に燃えはじめます。
ですから、薪の太さは選別しなくてはいけませんが、長さはどうでもよいのです。
また、広い河原などで焚き火をする場合は、手前の方を風下にしておくと、薪がどんどん乾いていくので効率的です。そのことも頭に入れておきましょう。
ダッチオーブンで蒸し料理とかは得意
炎としては温度の低い焚き火なので、高温で安定した炎が必要な揚げ物は不得意です。
どうしても野外で天ぷらが食べたいのなら、コンロを用意しましょう。
一般的には、薪の火を使った料理法は、鉄板焼きや串焼きでしょう。
煤けることを覚悟した上で、お米を炊いたり、鍋で煮たりもできます。
いかにもキャンプというのであれば、ちょっと費用はかかりますが、ダッチオーブンを買ってきて、それで蒸し料理というのもあります。
ダッチオーブンは、蓋まで鋳物で出来た鍋です。
たとえば、鶏の手羽先と酒、少々の塩を入れて、ダッチオーブンに入れます。
あとは焚き火にかけます。
さらに、蓋の上にもおき火を置いて、そのまましばらく待ちます。
ダッチオーブンは重たくて、荷物になりますが、キャンプを純粋に楽しみたいときには雰囲気が出てよいかもしれませんね。
なお、ダッチオーブンは鋳物です。放っておけば錆びてしまいます。使い終わったら、サラダ油を塗って保管しておきましょう。
気持ちよく焚き火をするためのルールがあります
火をつけられるようになると、その周りに自然と人が集まります。焚き火は、どこか幸せな気分にしてくれます。
さて、その焚き火ですがルールがあります。それは、「ゴミを燃やさない」ということ。
ビニール、プラスチック、発泡スチロールは、ダイオキシンを発生させます。印刷物の中には、青色や緑色の炎をあげて燃えるものがありますが、こういったものも厳禁です。毒で汚れた料理を食べたくないのは当然のことです。
空き缶も燃やしてはいけません。
生ゴミも燃え残るので、燃やさないようにしましょう。
正しく焚き火をすると、焚き火のあとには、白い灰が残ります。
これは木灰ですので、水に溶かして食器を洗えばよく落ちます。持ち帰って、ワラビのあく抜きに使ったり、草木に撒けば肥料にもなります。こちらは自然に帰りますが、有効に活用することもできます。
それとは逆に、かまどの跡に真っ黒な炭が残っている場合があります。これは上手に燃やさなかった証拠です。この炭は、自然界に帰りません。次回は上手に燃やせるようにしてください。
焚き火を消す
最後に火の始末です。
途中、目を離したら火が弱くなっていたことがありましたね。
このように薪どうしを離して、互いの燃焼熱で温度が上がらないようにすれば、火は勝手に消えていきます。
大きな薪は、その辺に転がして、水をかけます。これは次の人が使える薪になります。
小さな燃えかすは、逆に気持ち寄せてあげて、燃やしてしまいます。そうすると、完全に燃焼して、じきに白い灰になります。ただし、あまりにも固めてしまうと、中の方まで酸素が行き届かないので、いつまでも黒いままくすぶり続けます。
白い灰になったら、持ち帰って利用するか、ささっと掃いて、土に返してあげてください。
雨が降っているときでも火をつける方法
雨が降る中でも、焚き火は必要です。あきらめる必要はありません。
とは言っても、森の中はこうなっています。
みんな水浸しですね。これでは、火が付きそうにありません。
前で学習したとおり、水は周囲から熱を奪います。それによって、物が燃える条件がそろわなくなるのです。では、どうしたらよいでしょうか。簡単です。森の中から濡れていない物を探せばいいのです。
濡れたくないとき、どこへ行く?
あなたは森の中にいます。雨が降ってきました。どうやって雨宿りしますか。
たいがい、大きな木の下ではないでしょうか。
そうです。そこです。
たとえば、このスギですが、右半分は湿っています。風の影響で、雨水が当たったのでしょう。でも左半分は乾いています。
では、ほんの少しだけ、左側の樹皮をもらうことにします。一番外側の薄い樹皮だけなら手ではげるはずです。
ちなみに、木は樹皮を失えば枯れます。そのことは頭に入れて置いてください。
この杉の樹皮の場合は、細かく縦に裂いてください。
これを両手でしばらくもみもみします。
これで、樹皮の繊維のかたまりができました。火口(ほくち)になります。
さて、火口だけでは焚き火になりません。小枝や大きめの枝が必要です。
森の中を探してみると、こういうものがあるはずです。
枯れてしまっている小枝です。手にするとポキンと折れます。
下に落ちてしまうと水に濡れてしまいますが、こうなっているとそれほど濡れていないはずです。
ちなみに、生きている枝は燃えません。折るだけ無駄です。
また、大きな枯れ枝が落ちているときがあります。表面は全部ぐちゃぐちゃに濡れているのですが、折ってみてください。
このように、中は全然濡れていないのです。こうした枯れ枝も探してください。
ただし、表面が濡れていますので、火をつけやすくする必要があります。
樹皮は削ってしまいます。
そして、表面を薄く何度も削るようにしてみてください。
きちんとできると、「フェザースティック」(羽毛のような棒)と呼ぶそうです。
これらを組み合わせて、準備をきちんと整えれば、雨の中でも焚き火ができるでしょう。
まとめ
最後に復習です。
- いきなり太い薪には火がつきません。
- 薪には並べ方があります。
- 火をつけるときは、ウチワであおがない。
- 燃やしてはいけないものがあります。
- 消すところまでが焚き火です。
わからなくなったら、もう一度キャンプ場でも読み返してください。