ブナ科クリ属 落葉高木
高さ17m、幹の直径は80cm、あるいはそれ以上になる。
樹皮は灰色で厚く、縦に深い裂け目を生じる。
葉は長楕円形か長楕円状披針形、やや薄くてぱりぱりしている。表面はつやがあり、裏面はやや色が薄い。周囲には鋭く突き出した小さな鋸歯が並ぶ。
雌雄異花で、いずれも5~6月に開花する。雄花は穂状で斜めに立ち上がり、全体にクリーム色を帯びた白で、個々の花は小さいものの目を引く。また、香りが強い。非常によく昆虫が集まる。ブナ科植物は風媒花で花が地味のものが多いが、クリやシイは虫媒花となっている。一般に雌花は3個の子房を含み、受精した子房のみが肥大して果実となり、不受精のものはしいなとなる。
9~10月に実が成熟すると、自然にいがのある殻斗が裂開して中から堅い果実(堅果)が1~3個ずつ現れる。果実は単に「クリ(栗)」、または「クリノミ(栗の実)」と呼ばれ、普通は他のブナ科植物の果実であるドングリとは区別される。
日本のクリは縄文時代人の主食であり、青森県の三内丸山遺跡から出土したクリの実のDNA分析から、縄文時代にはすでに本種が栽培されていたことがわかっている。
材は、堅くて腐りにくいので、建物の柱や土台、鉄道線路の枕木、家具等の指物に使われたが、近年資源量の不足から入手しづらくなった。成長が早く、よく燃えるので昔は薪木としても使われていた。縄文時代の建築材や燃料材はクリが大半であることが、遺跡出土の遺物から分かっている。